「子どもたちに、迷惑をかけたくない」──自分の最後の住処を、自分で建てた事例|八千代市 F・M様
- 千葉県八千代市。「子どもたちに迷惑をかけたくない」というF・M様のお気持ちから、生前墓としてお建てしました。
- 玉砂利を敷かず、拝石と敷石で中を石で張りました。基礎には水を抜く穴を通しています。
- 石も形も場所もご自身で決めておけたので、お子様たちが後から慌てて選ぶことも、草むしりに追われることもありません。
子どもたちに、迷惑をかけたくない
「そろそろ、お墓を建てないと」
ご相談は、その一言から始まりました。八千代市のこの区画は、ご親戚が確保してくださっていたものだそうです。何十年ものあいだ、土地だけがそこにありました。
F・M様は、うちの三代目と同級生です。工事をさせていただいたとき、七十五歳。子どもの頃から知っている方に声をかけていただけたのは、本当に嬉しかったです。
そのあとに続いた言葉が、私にはいちばん残っています。子どもたちに、迷惑をかけたくない。
お墓のことを何も決めずにいると、その荷物は、そのままお子様たちのところへ行きます。どこに建てるのか、いくらかかるのか、どんな形にするのか。悲しみのまっただ中で、期限を切られて決めることになる。F・M様は、それをさせたくないと仰いました。
F・M様のお墓は、生前墓です。ご自身がお元気なうちに、自分で見て、自分で決めて建てておく。昔から寿陵(じゅりょう)と呼ばれて、縁起のよいものとされてきました。
私が生前墓をおすすめするのは、もっと現実的な理由からです。あとに残されたご家族が、慌てて決めずに済むからです。石の種類も、形も、区画の使い方も、時間をかけて選べる。工場で実物を見て、納得してから据えられる。この差は、思っている以上に大きいです。
空いた区画を見て、心配したこと

着工前の区画です。丁張りの杭を立てたところ。
この写真を撮ったとき、私が考えていたのは完成の形ではありませんでした。十年後、二十年後に、ご家族がここで何をしているかです。
近藤石材店は『お墓リフォームの専門家』です。八千代市・船橋市・千葉市を中心に、何万件というお墓の工事に携わってきました。そのほとんどが、建てて何十年か経ったお墓の直しです。だから、十年後に何が起きるのかを、この目で見てきています。
いちばん多いのが、雑草です。抜いても抜いても、また生えてくる。あれは、ご家族のお手入れが足りないからではありません。建てたときの作り方に原因があります。玉砂利を敷いた区画は、砂利の隙間に土と草の種が入り込みます。草の出る場所が、最初から用意されてしまっているのです。同じ石屋として、申し訳なく思います。
新しく建てるときは、その原因を先に消しておく。リフォームの専門家である私たちが、新しいお墓をつくるときのいちばんの約束です。
だから、中は全部、石で張りました
F・M様の区画には、玉砂利を敷きませんでした。拝石と敷石で、中を石で張っています。草の出る場所そのものを減らす、いちばん確実なやり方です。
外柵は、羽目(区画のまわりに立てる板石のことです)を使わず、低い形にしました。理由は、この霊園の場所です。
ぐるりを畑に囲まれているので、風の強い日は土が飛んできます。飛んでくる土は、こちらでは止められません。だったら、溜まらないようにするしかない。羽目を立てると、その内側に土がたまります。たまった土は、そのまま草の土になります。低くしておけば、風は抜けていきますし、水を流せば外へ出ていきます。
後ろの三軒も、同じ羽目のないつくりでした。並びとして浮かないというのも、この形にした理由のひとつです。
石塔は洋型にしました。最近はこの形を選ばれる方が多いです。カタログだけで決めず、実際に霊園をまわって、建っているお墓を見ながら形を決めました。背が低くて重心が下にあるぶん、和型より地震で揺すられにくいのもいいところです。竿石には「和」の一字と、家名を彫りました。
完成すると、見えなくなるところ
ここから先は、出来上がると全部隠れてしまう部分です。でも、十年後の姿を決めるのは、ここです。

ユンボで掘り下げます。奥に積んであるのが、出てきた土です。
この土を、私たちはお墓の中に戻しません。処分費を浮かせるために、見えない石の下へ土を戻してしまう工事があります。そうすると、その土から草が出続けます。だから近藤石材店は、掘った土をトラックに積んで、一般の処分場まで運びます。処分費はかかります。でも、そこを惜しんだら意味がありません。(※構造上どうしても取りきれない古い土などは除きます)

砕石を敷いて、ランマーで締め固めます。
砕石は、しっかりと転圧します。ここが甘いと、何年か経ってから地面ごと沈みます。

型枠の中に砕石を敷いて、鉄筋を組みました。

生コンを打つ前の、下地の完成です。立っている紙の筒は、水を抜く穴になります。
お墓の基礎は、ただの一枚板ではありません。雨水がたまったままにならないよう、あらかじめ筒を立てて、水の抜け道をつくっておきます。
厚みは三十センチ。鉄筋は二十五センチから三十センチの間隔で組んでいます。ここは目に見えなくなるところですが、十年後、二十年後にお墓が傾くかどうかは、この厚みと鉄筋で決まります。

箱尺を立てて、コンクリートの厚みを測ります。

ミキサー車から生コンを流し込みます。

コテで表面を均していきます。丸く空いているのが、水抜きの穴です。

型枠を外した基礎です。ここから先は、もう見えません。
据えていきます

クレーンで吊って、外柵の石を据えます。基礎に置いた白いのが耐震ボンドです。

外柵を据えて、中に受けの石を渡しました。丸い穴が基礎の水抜きです。

水をかけながら、外柵の石に金物を付ける穴をあけます。

金物を入れて、敷石の下のコンクリートを打ったところ。
石と石の合わせ目は、あとから開いてこないように詰めていきます。ここが切れると、そこから水と土が入ります。十年後に効いてくるのは、こういう地味なところです。
工場で見ていただいてから、据えました

据え付ける前に、工場で見ていただきました。
近藤石材店には自社工場があります。だから、現場に運ぶ前に、出来上がった石塔をお客様に見ていただけます。据えてしまってからでは直せないことも、工場でなら直せます。

敷石を張ったあと、耐震ボンドを点で置いて芝台を据えます。

中台に耐震ボンドを点で置いて、竿石を重ねます。
面でべったり接着せず、点で留めます。地震で揺れたときに、石がわずかに動いて力を逃がすためです。
自分の、最後の住処

拝石をずらしたところ。納骨室の口はここです。

背面から。ステンレスの塔婆立てが付いて、これで完成です。
何十年も空いていた区画に、お墓が建ちました。けれど、私たちにとっては、ここがゴールではありません。
生前墓は、自分の最後の住処を、自分の目で見て決められるお墓です。F・M様は、工場で実物を見て、納得してから据えさせてくださいました。あとに残るお子様たちは、もう何も決めなくていい。それが、いちばんの贈り物だと思います。
玉砂利を敷かなかったので、草の出る場所がぐっと減りました。外柵が低いので、水を流して拭くだけで、ひととおりの掃除が終わります。十年後にお参りに来たご家族が、草むしりからではなく、手を合わせるところから始められる。そこまで含めて、この工事です。
🔨 5代目のひとこと
F・M様は、うちの三代目と同級生で、当時七十五歳でした。土地だけはずっとあって、そろそろということでお声がけいただきました。子どもたちに迷惑をかけたくない、と。ここの霊園はまわりが畑なので、風の強い日は土が飛んでくるんです。それはもう、しょうがない。だったら溜まらない形にすればいいということで、羽目をなくしました。後ろの三軒も同じつくりでしたから、並びとしても浮かない。玉砂利をやめて中を石で張ったのも、同じ理由です。うちはお墓リフォームの専門家なので、十年後に直しに来ることになるお墓の作り方は、だいたい分かります。だったら、最初からやらなければいい。それだけのことなんです。
F・M様にいただいた疑問・ご質問
Q. 生前にお墓を建てるのは、縁起が悪くないでしょうか。
A. その逆です。生前に建てるお墓は寿陵(じゅりょう)と呼ばれ、昔から縁起のよいものとされてきました。実際のところ、いちばん大きいのは、ご自身で選んで決められることです。石も形も、時間をかけて納得のいくまで選べますし、ご家族が急いで決める必要もなくなります。
Q. 玉砂利と石張りでは、後々どちらが手間になりませんか。
A. 石張りです。玉砂利は見た目が柔らかくていいのですが、砂利の隙間に土と草の種が入り込みます。抜いても、また同じところから出てきます。石で張ってしまえば、草の出る場所そのものが減ります。ご予算やお好みもあるので必ず石張り、とは申しませんが、お手入れの手間を第一に考えるなら石張りをおすすめしています。
Q. 洋型は和型より地震に弱くないですか。
A. 逆です。洋型は背が低くて重心が下にあるので、和型より揺すられにくいです。そのうえで、石を重ねる面には耐震ボンドを点で付けています。面でべったり付けるより、揺れたときに力を逃がしてくれます。
八千代市・船橋市・千葉市・四街道市・大網白里市で、新しくお墓を建てたい方も、今あるお墓のことでお困りの方も、お気軽にご相談ください。現地を見せていただくところからで大丈夫です。
施工前 → 施工後
施工前。土地だけが、ずっとありました。
施工後。ご自身で選んで決めた、最後の住処です。
執筆:有限会社近藤石材店 5代目 近藤洋(創業1925年・千葉県八千代市佐山1837-1・TEL 047-488-5054)