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据え直しが終わり、まっすぐに立った井上家の墓石

「倒れたら、どうしよう」——後ろへ寝ていた石塔を、傾きの原因から断って据え直した事例|八千代市 徳山様

  • 千葉県八千代市の井上家墓所。京都へお嫁ぎになったお施主様が、なかなかお参りに来られないまま、石塔が後ろへ大きく傾いてしまっていました。お母様の納骨のあと、ご相談をいただいた工事です。
  • 石塔をすべて外し、墓所の中の土をぜんぶ取り出して、砕石・転圧・鉄筋入りのコンクリートから造り直したうえで、元の石をそのまま据え直しました。
  • 傾きの原因だった「土の土台」がなくなり、草の出てくる場所もほとんど無くなりました。遠方からでも、安心してお参りいただける状態です。

「倒れてしまったら、どうしようと思って」

そう仰ったのは、八千代市にある井上家のお墓を守っておられる、京都へお嫁ぎになった徳山様です。お母様の納骨でお墓の前に立たれたときのことでした。ご実家のお墓ですから、気にはなる。でも京都からでは、そう何度も来られない。その間にお墓は少しずつ傾いていって、気づいたときには、後ろへほとんど寝てしまっている状態でした。

「倒れたら、どうしよう」

草に覆われた施工前の井上家墓所
施工前。墓所の内側は一面が草に覆われていました。

はじめてお墓を見にうかがったとき、墓所の内側は一面が草でした。特に多かったのがドクダミです。ドクダミは地下茎で横へ横へと広がっていきますので、表面を刈っただけでは根が残って、翌年また同じように生えてまいります。これは、お手入れが行き届かなかったからではありません。土がむき出しのままである限り、誰がやってもこうなります。

後ろへ大きく傾いた施工前の石塔を横から見たところ
横から見ると、石塔が後ろへ大きく傾いていました。

横から見て、正直ひやりとしました。石塔のすぐ後ろは他家のお墓です。墓誌は黒御影、石塔は小松石という、関東でもっとも良いとされる石が使われています。万が一そちら側へ倒れることがあれば、数百万円規模のお直しになりかねません。とても放っておける状況ではないと判断し、徳山様にご報告のうえ、据え直しをご提案いたしました。

傾きの原因は、土でした

草をすべて抜き取り、土がむき出しになった墓所
除草後。石塔と塔婆立ての傾きがはっきり見えます。

まず草をすべて抜き取って、段取りを整えました。土がむき出しになると、傾きがはっきり見て取れます。土の上に石が直接乗っているだけの造りでしたので、長い年月のあいだに土が痩せて沈み、少しずつ傾いていったものと思われます。

敷いた板の上に丸棒を並べ、石を転がして動かしているところ
コロ。板の上に丸棒を並べ、石を転がして動かします。

石は無理に吊り上げません。板を敷いたうえに丸棒を並べて、その上を転がすようにして少しずつ動かします。この丸棒のことを、私たちは「コロ」と呼んでいます。写真の、石の下に差し込んである銀色の棒がそれです。持ち上げないぶん、石にも人にも無理がかかりませんし、どこも傷つけることなく動かせます。この手順で、墓所の外の安全な場所まで移していきました。

三脚とチェーンブロックで石塔を一段ずつ解体する様子
三脚とチェーンブロックで、石塔を一段ずつ解体します。

移し終えたところで三脚を組み、石鋏(いしばさみ)を掛けて一段ずつ下ろしました。ここはクレーンの入らない場所ですので、この段取りですべて解体しています。まわりは他家のお墓が並んでおりますから、決して当てることのないよう、声を掛け合いながら進めました。傾いた重い石を扱ううえで、今回もっとも神経を使った作業です。

芝台の下から出てきた厚さ2センチほどの薄いモルタル
芝台の下にあったモルタルは、厚み2センチほどでした。

掘り進めると、傾きの原因が出てきました。石塔の一番下の台石である芝台(しばだい)の下に入っていたモルタルが、厚み2センチほどしかなかったのです。これでは石の重さを受け止めることができません。実質、土の上にただ乗っているだけの状態でした。芝台が傾けば、その上に積まれた石はすべて傾きます。石が悪かったのでも、お手入れが悪かったのでもなく、原因はここにありました。

土は、戻しません

墓所の中の土をすべて取り出しているところ
墓所の中の土を、すべて取り出していきます。

原因が分かれば、あとはそれを断つだけです。墓所の中の土は、すべて取り出しました。外柵(げさく)の天端から200ミリ下がりまでレベルを取り、目分量ではなく数字で確かめながら掘り下げています。土が残っていると、そこからまた草が生えてまいりますし、石が沈む原因にもなります。近藤石材店は、お墓の中に土を戻しません。

古いコンクリートを砕いて敷き込み、その上に砕石を敷いた状態
出てきた古いコンクリートを砕いて敷き、その上に砕石を敷きます。

土を取り切ったあと、墓所内から出た古いコンクリートを砕いて下に敷き込みました。処分してしまわず、地盤を固める材料として使わせていただいています。その上に砕石をおよそ5センチ。ご遺骨の入っている既存のカロート(納骨室)は、そのまま残しております。

ランマーで砕石を締め固めている転圧作業
ランマーで砕石をしっかりと締め固めます。

ランマーでしっかりと締め固めます。土を20センチ取って、砕石が5センチ。残りの15センチが、このあと打つ仕上げコンクリートの厚みになります。ここが緩いままですと、後々の沈みにつながります。完成後には決して見えなくなる部分ですが、ここを省かないことが長持ちの分かれ目です。

完成すると、見えなくなるところ

芝台の下地となるコンクリートを打ち込んでいるところ
芝台の下地コンクリート。厚みは10センチ以上を確保。

芝台は四つの石を組み合わせた「四つ組」でした。四つ組はそのままではすぐに据わりませんので、先に下地となるコンクリートを打っておきます。高さは既存のカロートの天板に合わせ、型枠を組み、挿し筋を入れて、カロートと一体になるように施工しました。厚みはしっかりと10センチ以上を確保しています。以前は2センチのモルタルだけでした。その何倍もの厚みで、石を受け止められる土台にいたしました。

芝台と塔婆立ての据え付けが終わった状態
芝台と塔婆立ての据え付けが終わったところ。

四つ組の芝台は、一つひとつの石の高さを合わせる必要があります。石材用ボンドとモルタルで調整しながら、水平器を当てて根気よく合わせていきました。傾いていた塔婆立ても一本ずつ据え直し、足元がしっかり埋まるように据えたうえで、まわりにコンクリートを回して固めています。

墓所全面にワイヤーメッシュと鉄筋を敷き込んだ打設前の状態
全面にワイヤーメッシュ、あわせて鉄筋も入れています。

ここから墓所全面に仕上げのコンクリートを打設します。厚みは15センチ。全面にワイヤーメッシュを敷き込み、あわせて鉄筋も入れております。メッシュと鉄筋が入ることで、コンクリートが割れにくく、墓所全体が一枚の板として動きにくくなります。土の上に石が乗っていた以前の状態とは、まったく違うものになりました。

生コンクリートを流し込んでいるところ
生コンクリートを、少しずつ様子を見ながら流し込みます。

生コンクリートを流し込んでいきます。メッシュと鉄筋のあいだにも隙間なく行き渡るよう、少しずつ様子を見ながら打ち込みました。カロートの中へ入り込まないよう、開口部はきちんと養生しております。

コテで均して仕上げた打設完了後の墓所
打設完了。コテで平らに均し、水勾配を見ながら仕上げます。

コテで平らに均していきます。この面は完成後もそのまま目に見える部分ですので、仕上げには特に時間をかけました。水が溜まることのないよう、勾配を見ながらの作業です。このあと三日間の養生期間を置き、十分に固まってから石塔の据え付けに入っております。

カロートの天板を、上げました

ひとつ、その場で判断したことがあります。既存のカロートの天板が、外柵よりも低い位置にあったのです。この高さのまま墓所全体のコンクリートを打ちますと、雨水が外へ出ていかず、墓所の中に溜まってしまいます。

そこで当店のサービスとして、カロートの上に御影石を張り、高さを出させていただきました。外柵よりも高くなりますので、墓所全体にきちんと水勾配が取れ、雨水が自然と外へ流れていきます。水が溜まらないということは、苔も汚れも付きにくいということです。10年後のお参りは、ここで差が出ます。

なお、芝台はカロートの中心とはわずかにずれております。カロートに合わせて据えることもできたのですが、カロートは完成後には見えなくなりますので、墓所全体の中心に合わせることを優先いたしました。

この石は、そのまま使えます

竿石を吊って合わせ面に石材用ボンドを入れながら据え付ける様子
竿石を吊ったまま、合わせ面にボンドを入れて下ろします。

今回、石はひとつも新しくしておりません。傾いていたのは石のせいではなく、下の土のせいでしたから、原因さえ断てば、そのまま使えます。お預かりしていた石をチェーンブロックで吊り上げ、台車で運び、取り外しのときとちょうど逆の手順で、コロで転がしながら所定の位置へ寄せていきました。竿石(さおいし)は、吊って浮かせている状態のまま合わせ面に石材用ボンドを入れ、そのまま下ろして石と石をしっかり結んでいます。以前は何も入っていない状態でしたので、それに比べれば格段に効いております。

合わせ面には、耐震性の高いコーキング材も打ちました。今回は石をコロで転がしながら据えていく工法ですので、免震パッドは使っておりません。パッドを入れますと転がしている途中で動いてしまうためです。そのぶん、石材用ボンドと耐震コーキングを併せて使い、石と石をしっかりと結んでおります。工事の間、カロートの中の大切なお骨に触れることのないよう、開口部はきちんと養生したうえで作業を進めました。

最後に目地(石と石のつなぎ目のことです)を詰めて仕上げます。石の内部に水を入れないことが、石を長持ちさせるうえで何より大切です。あわせてサービスとして、草の出てきそうな細かい隙間もセメントで埋めさせていただきました。どうしても手の届かないところは残ってしまいますが、細いところは一つひとつふさいであります。

10年後、20年後のこと

完成後の井上家墓所を横から見たところ
完成。横から見ても、石塔の傾きがなくなっています。

後ろへ寝てしまっていた石塔が、まっすぐに立ちました。墓所の内側は、土から鉄筋入りのコンクリートへと生まれ変わっています。土の見える部分をなくしましたので、以前のように一面が草に覆われることは、まずないかと存じます。絶対に草が出ないとは申しませんが、隙間からわずかに出る程度ですので、軽くほうきで掃いていただければ十分です。まわりにはまだ土が残っておりますので、そちらからお墓のほうへ草が来ることもあるかと存じますが、格段にお掃除しやすくなったと思います。簡単な掃除道具さえあれば大丈夫です。

近藤石材店は『お墓リフォームの専門家』です。何万件もの現場で、10年後・20年後にご家族が苦労している原因をこの目で見てきました。その原因のほとんどは、見えなくなる部分の造り方にあります。今回の八千代市の井上家のお墓も、直したのは石ではなく、石の下です。京都からはなかなかお越しになれないことと存じますが、安心してお参りいただける状態でお引き渡しいたしました。

🔨 5代目のひとこと

徳山様は京都にお嫁ぎになっていて、八千代のご実家のお墓をなかなか見に来られないという状況でした。横から見たときは、正直ひやっとしました。後ろは他家のお墓ですから、倒れていたら数百万円のお直しです。ただ、石そのものは何も悪くない。小松石のいい石ですし、まだ何十年でもいけます。悪いのは下の土です。だから石は一本も替えていません。全部外して、土を出して、下から造り直して、同じ石を戻しただけです。カロートの天板が外柵より低かったのは現場に入ってから分かったことで、あのままコンクリートを打ったら水が抜けないので、御影石を張って上げさせてもらいました。まわりにまだ土が残っているので、そこまで手を入れればもっと良くなります。気になるようでしたら、いつでも言ってください。

徳山様にいただいた疑問・ご質問

Q. 傾いてしまったお墓は、建て替えないと直らないのでしょうか。

A. いいえ、多くの場合は建て替えなくても直ります。傾きの原因は石そのものではなく、石を支えている下の造りにあることがほとんどだからです。今回も石は一本も新しくせず、すべて外して下から造り直し、同じ石をそのまま据え直しました。自社工場を持っておりますので、石を活かす方向でのご提案ができます。

Q. 一度きれいにしても、また草が生えてしまうのではないでしょうか。

A. 草が生え続けるのは、見えない部分に土が残っているからです。ドクダミのように地下茎で広がる草は、表面を刈っても根が残れば翌年また出てまいります。今回は墓所の中の土をすべて取り出し、砕石とコンクリートに置き換えましたので、草が出てくる場所そのものがほとんどありません。絶対に生えないとは申しませんが、軽く掃いていただく程度で保てる状態です。

Q. 遠方に住んでいて、なかなかお参りに行けません。それでも大丈夫でしょうか。

A. だからこそ、見えない部分をしっかり造っておくことが大切だと考えております。通える回数を増やすのではなく、通わなくても荒れにくい状態にしておく。それが私たちの仕事です。もちろん、何かお気づきのことがあれば、遠方からでもお電話一本でご相談いただけます。

施工前 → 施工後

草に覆われた施工前の井上家墓所

施工前。一面が草で、石塔が傾いていました。

据え直しが完了した井上家墓所

施工後。まっすぐに立ち、土の面がなくなりました。

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お墓の傾きが気になる、草が手に負えない、という段階でご相談いただければ、たいていは今ある石を活かしたまま直せます。八千代市・船橋市・千葉市・四街道市・大網白里市あたりでしたら、現地を見にうかがいます。お気軽にどうぞ。

執筆:有限会社近藤石材店 5代目 近藤洋(創業1925年・千葉県八千代市佐山1837-1・TEL 047-488-5054)

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