戒名を彫る前に、浮いた墓誌を据え直した事例|印西市 Y・H様
この工事のポイント
施工前。合わせ目から土がのぞいていました
施工後。まっすぐ据わり、戒名も入りました
印西市のお墓で、Y・H様からお母様の戒名を墓誌に彫り足すご依頼をいただきました。うかがってみると、墓誌の下が浮いてぐらついていました。砂で据えた台にたまった水が、凍って石を押し上げていたのです。水と落ち葉を出し、水で溶いたセメントで隙間なく据え直してから、戒名を彫りました。


① 持ち上げていたのは、凍った水でした
木の下で一日じゅう日陰になる墓所です。砂の台にたまった水は乾かず、冬に凍って石を数ミリ押し上げる。その隙間に落ち葉が入り、氷が解けても石は元の高さに戻れない。それを何年も繰り返していました。


② 砂ではなく、水で溶いたセメントで据える
浮いた石は、上から押さえても戻りません。中に入り込んだものが、つっかえ棒のように残っているからです。落ち葉と水をかき出し、やわらかく溶いたセメントを流しました。隙間が残らなければ、水のたまる場所そのものが無くなります。

③ 彫る前に直す。順番は逆にできない
文字はサンドブラストで彫るので、石はそれなりに振動します。浮いたまま彫れば、彫っている最中に墓誌が動き、文字の高さも揃いません。遠回りに見えても、先に据え直すほうが仕上がりも持ちもよくなります。
| 場所 | 千葉県印西市の墓地(お住まいは大網白里市) |
|---|---|
| 工事 | 墓誌の据え直しと、戒名の彫り足し |
| 主な工事 | 合わせ目の切り離しと墓誌の取り外し/落ち葉と水のかき出し/水で溶いたセメントでの据え直し/サンドブラストでの戒名彫り/墓所の清掃 |
| こんな方に | 墓誌が浮いてぐらついている方/戒名の彫り足しを頼む予定の方 |
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ここから先は、工事の中身を順番にお見せします。少し長くなりますが、完成したら見えなくなるところこそ、近藤石材店がいちばん力を入れているところです。
彫る前に、気がつきました
大網白里市にお住まいのY・H様から、印西市にあるお墓のご相談をいただきました。お母様が生前に、近藤石材店で建てられたお墓です。
ご依頼は、お母様の戒名を墓誌(亡くなった方のお名前や戒名を刻む石板のことです)に彫り足すこと。ところが現場で墓誌を見たときに、下が浮いて、手をかけるとぐらつくのが分かりました。Y・H様ご自身も、気づいておられませんでした。

墓誌の足元。石と石の合わせ目に、黒い土と落ち葉がのぞいていました。
どれくらい浮いているのか、印をつけて確かめます。写真の隙間、けっこう開いているのが分かりますでしょうか。

浮いている場所に印をつけました。隙間がこれだけ開いています。
遠方にお住まいだと、こういう小さな変化にはなかなか気づけません。年に何度かのお参りで「なんとなく去年と違う気がする」と思っても、確かめようがないですから。気づけなくて当たり前だと思います。
外してみたら、砂だけでした
彫るより先に、こちらを直します。まわりの合わせ目を切って、墓誌を一度外しました。

墓誌を外すために、合わせ目を切っていきます。
下にあったのは、わずかな砂だけでした。昔は、あとから彫り足せるように墓誌を砂で据えて、まわりの隙間をコーキングで止める。それが当時のやり方です。
ただ、年数がたつとコーキングは痩せて、水の入る道ができます。砂の台は真ん中がくぼんでいますから、一度入った水は出ていきません。
中にたまっていたのは、水と落ち葉でした。

墓誌を外した下。たまっていたのは、水と落ち葉でした。
持ち上げていたのは、凍った水でした
このお墓は木の下にあって、一日じゅう日陰になる場所です。たまった水は、いつまでも乾きません。冬になれば凍ります。
氷は水より体積が大きいので、下から石を押し上げます。上がるのは一度に数ミリです。ところが、そのわずかな隙間へ落ち葉やごみが入り込む。氷が解けても、石は元の高さまで戻れません。それを何年も繰り返して、少しずつ浮いてきました。
お墓で起きる困りごとは、たいていお客様のお手入れのせいではありません。雑草も、敷石の黒ずみも、そして今回の浮きも、原因は見えないところの作り方にあります。
上から押さえても、直りません
浮いた石は、上から押さえても元には戻りません。隙間に入り込んだものが、つっかえ棒のように残っているからです。
ですから、たまっていた落ち葉と水をかき出すところから始めます。ベテランの佐々木が、溝の奥に残った土を一筋ずつ掻き落としていきました。

溝の中にたまっていたものを、奥まで掻き出します。
砂ではなく、セメントで据えます
据え直しは、水平を見ながら少しずつ。ここがずれると、彫ってある文字の並びまで傾いて見えてしまいます。

水平を見ながら、ミリ単位で位置を合わせていきます。
今回は、砂ではなく、水で溶いたセメントを下から流し込みました。

砂ではなく、水で溶いたセメントを流し込みます。
やわらかく溶いてあるので、狭いところまで自分で回っていきます。隙間が残らなければ、水のたまる場所そのものが無くなる。凍る水が無ければ、石は押し上げられません。

据え直しが終わったところ。足元の隙間が無くなりました。
近藤石材店は『お墓リフォームの専門家』です。10年後、20年後に何が起きるかを、何万件もの現場で見てきました。だからこそ、完成すると見えなくなるところにこそ手をかけます。
順番を、逆にはできません
セメントがしっかり効いてから、ようやく本来のご依頼だった戒名彫りにかかります。
お墓の文字は、サンドブラストという方法で彫ります。彫りたい文字の形に切り抜いたゴムを石に貼って、その上からかたい砂を高圧の空気と一緒に当てる。ゴムのないところだけが削れて、文字になるという仕組みです。

彫る文字を切り抜いたゴムを、墓誌に貼り付けます。

まわりのお墓に砂が飛ばないよう養生して、彫る準備をととのえます。

サンドブラストで、一文字ずつ彫っていきます。
このとき、石はそれなりに振動します。浮いてぐらついたままの墓誌にこれをやったら、彫っている最中に動いてしまう。文字の高さも揃いません。
だから、彫る前に直す。順番は逆にできないんです。
きれいにして、お返ししました

彫り上がった文字を、刷毛できれいに仕上げます。
彫り終えたあとは、墓所のお掃除もあわせてさせていただきました。ご納骨の日を、きれいな状態でお迎えできて「助かりました」と言っていただけたのが、こちらも嬉しかったです。
遠方のY・H様が次にお参りにみえたとき、どこを直したのかがひと目で分かるように、直した場所には目印を付けてお渡ししました。
🔨 5代目のひとこと
このお墓は、お母様が生前にうちで建てさせていただいたものです。お母様の戒名を彫りにうかがって、そこで浮いているのに気がつきました。場所が場所でした。木の下で、日が当たらず、水が乾かない。当時のやり方としては間違っていませんでしたが、この場所には合っていなかった。うちが建てたお墓ですから、これは言い訳のしようがありません。いい教訓をいただきました。日陰の墓所は、最初から水が抜ける据え方にする。覚えたことは、次の現場に持っていきます。十年後に差が出るのは、たいてい見えない内側です。
Y・H様にいただいた疑問・ご質問
Q. 戒名を彫るだけのつもりでした。先に直さないといけませんか。
A. 文字はサンドブラスト(かたい砂を高圧の空気と一緒に当てて石を削る彫り方です)で彫るので、石が振動します。浮いてぐらついたまま彫ると、彫っている最中に墓誌が動いて、文字の高さが揃わなくなることがあります。遠回りに見えても、先に据え直してから彫るほうが、仕上がりも、その後の持ちもよくなります。
Q. 上から押さえて、直すことはできないのですか。
A. 一度浮いてしまった石は、上から押さえても元の高さには戻りません。隙間に入り込んだ落ち葉や土が、つっかえ棒のように残っているためです。一度外して中を空にしてから据え直すのが、いちばん確実です。
Q. 遠くに住んでいて立ち会えません。どこを直したのか、分かりますか。
A. 作業のようすは写真でお送りしています。今回は、次にお参りにみえたときにひと目で分かるよう、直した場所に目印を付けてお渡ししました。お墓は毎日見に行けるものではありませんから、あとから分かる形にしておくことを大事にしています。
施工前 → 施工後
施工前。合わせ目から土がのぞいていました。
施工後。まっすぐ据わり、戒名も入りました。
お墓のぐらつきや浮きは、早く見つけるほど小さな工事で済みます。戒名の彫り足しと一緒に見ておくこともできますので、千葉県内を中心に伺っています。お墓で気になるところがあれば、ご相談・お見積りは無料です。
お墓のことで気になっていることがあれば、まずは写真だけでも大丈夫です。今のお墓を見て、10年後もラクにお参りできる直し方を一緒に考えます。
執筆:有限会社近藤石材店 5代目 近藤洋(創業1925年・千葉県八千代市佐山1837-1・TEL 047-488-5054)