石に穴を開けず、落ちた石塔を土台から据え直した事例|千葉県 S・M様
この工事のポイント
施工前。上の石が地面に落ちていました
施工後。台座から水平を取り直して据え直しました
千葉県内の竹林の中にあるお墓です。大阪にお住まいのS・M様から、上の石が落ちてしまったご先祖の石塔を直したいとご相談をいただきました。二基とも取り外し、傾いていた台座から水平を取り直して、石に穴を開けずに据え直しています。

① 傾いていた台座から、水平を取り直す
上の石をまっすぐ立てるには、下の台座が水平でないといけません。職人が台座から直し、水平をきっちり取りました。


② 石に穴を開けず、ボンドと耐震コーキングで結ぶ
穴を開けないでほしいというご希望に合わせ、ダボは使っていません。合わせ面に石材用ボンド、合わせ目に耐震コーキングを入れて、石と石を結びました。

③ 車の入りにくい竹林でも、三脚とチェーンブロックで
クレーンで道を荒らさないよう、三脚とチェーンブロックに切り替え、いつもの二人ではなく三人で据え直しました。
| 場所 | 千葉県内の墓地(竹林の中) |
|---|---|
| 工事日 | 2026年9月2日 |
| ご相談 | 上の石が落ちてしまった石塔を直したい(大阪にお住まいで、立ち会いが難しい) |
| 主な工事 | 石塔2基の取り外し/合わせ面の古いモルタル落とし・洗浄/台座の水平出し/モルタルと石材用ボンドで据え直し(ダボなし)/耐震コーキングと目地入れ |
| こんな方に | 遠方にお住まいで立ち会えない方/石に穴を開けずに直したい方/車の入りにくい場所にお墓がある方 |
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ここから先は、工事の中身を順番にお見せします。少し長くなりますが、完成したら見えなくなるところこそ、近藤石材店がいちばん力を入れているところです。
石塔のいちばん上の石が、地面に落ちていました。
竹林の中にある、静かな墓所です。お家の石塔も、その横に並ぶ先祖の石塔も、どちらも上の石がすでに外れていました。
遠くから、お墓を気にかけて
ご相談をくださったのは、大阪にお住まいのS・M様です。千葉県内にあるご先祖のお墓のことを、ずっと気にかけていらっしゃいました。
遠くに住んでいると、思い立ってすぐ様子を見に行く、というわけにはいきません。次にお参りに来たとき、もっと崩れていたらどうしよう。そんな不安を抱えたままでは、落ち着いて手を合わせるのも難しいですよね。
やり取りは、メールとお電話で進めました。

施工前。上の石が外れて、地面に落ちていました

先祖の石塔も、上の石が落ちていました
落ちた石を見て、わかったこと
S・M様のお話では、木がぶつかって上の石が落ちてしまったそうです。
落ちた石を見れば、外す前からわかりました。石と石の間に、ほとんど何も入っていなかったんです。ただ置かれているだけなので、何かの拍子にぶつかれば、落ちてしまいます。下の台座も、だいぶ傾いていました。
取り外しは、上の石から一段ずつ。石をはさんで吊り上げるクランプを使って、傷をつけないように外していきました。

クランプで、一段ずつ取り外します
取り外した石は安全な場所に並べて、合わせ面(石と石が重なる面のことです)に残った古いモルタルを、はつり落としました。ここをきれいにしておかないと、据え直したときにガタが出てしまうんです。

合わせ面の古いモルタルを落とします
台座から、水平を取り直す
ここだけの話ですが、はじめは台座まで直す予定ではありませんでした。
ところが現場に入った職人二人が、上の石をまっすぐ立てるなら台座が水平じゃないとまずい、と言って、台座から直し始めたんです。S・M様からはそこまでしなくていいと言っていただいていたので、基礎のコンクリートは打たず、土のまま直しています。そのかわり、水平はきっちり取りました。
台座が据わっていたところの土を掘り出して、ネコ車で運び出しながら、高さを合わせていきます。

据わっていたところの土を掘り出します
据え直す石は、合わせ面はもちろん、表面の汚れもブラシで洗い落としました。長年の汚れが落ちると、石本来の色と質感が戻ってきます。

石の汚れを、ブラシで洗い落とします
下の石を起こしながら、据え付け面の高さと水平を出していきます。重い石なので、一気には動かせません。バールとハンマーを使い、てこの要領で少しずつ。ここが狂うと、上に積む石すべてが狂ってしまう、大事なところです。

高さと水平を、少しずつ出していきます
クレーンをやめて、三脚にしました
はじめは、カートクレーンを使う予定でした。
ただ、この墓所は道路から400〜500メートルほど奥にあります。途中には段差もあって、畑の中の道を通っていかなければなりません。カートクレーンを持っていけないことはないのですが、その道をガタガタに荒らしてしまうおそれがありました。
現場で職人と相談して、三脚とチェーンブロック(鎖で重い石を吊り上げる道具です)で据え直すほうが確実だ、ということになりました。そのぶん、いつもなら二人のところを三人でかかっています。
足元が土なので、三脚がずれないように気を配り、吊り上げる石の重心が三脚の真ん中から外れないよう、時間をかけて位置を合わせました。

竹林の中で、三脚とチェーンブロックを組んで
モルタルとボンドを、両方使う理由
据え付け面には、まわりにモルタル、真ん中に石材用ボンドを置きました。
モルタルだけでは、弱い。ボンドだけでは、高さが合わない。だから、モルタルで高さを受けて、真ん中のボンドでしっかり固めます。
この上へチェーンブロックで石を静かに下ろし、吊ったまま位置と向きを合わせて、水平を確かめてから力を抜いていきました。

まわりにモルタル、真ん中に石材用ボンド
石に、穴は開けずに
今回は、石に新しく穴を開けたり加工したりはしないでほしい、というご意向をいただいていました。そこでダボ(石と石をつなぐ芯棒のことです)は使わず、石材用ボンドとコーキングで石と石を結んでいます。
合わせ面にボンドを入れると、石と石が直にくっつきます。モルタルだけのときとは比べものにならないくらい、強く結びつくんです。

合わせ面に、石材用ボンドを入れます
竿石(さおいし)は、ボンドの上に静かに下ろし、四方から見て通りと水平を確かめながら位置を決めました。ここが決まると、石塔全体がまっすぐに見えます。

竿石の通りと水平を確かめて据え付け
合わせ目から、水を入れない
石と石の合わせ目には、耐震性の高いコーキング材を打ちました。先に養生テープを貼ってはみ出しを防ぎ、打ち込んでからテープを剥がして仕上げます。
ボンドで固めたうえにコーキングを重ねることで、石どうしをしっかり結びながら、地震の揺れを逃がすことができます。

養生テープを貼って、耐震コーキング
続けて、まわりの目地を入れました。隙間が残っていると、そこから水が入り込んでしまうからです。

まわりの目地を入れて、水の入り口をふさぎます
昔の石は、底がそろっていない
先祖の石塔も、上の石が地面に落ち、ほかの段も石と石の間にほとんど何も入っていない状態でした。
昔の石は、底面が機械で切りそろえられていません。そこで据え付け面にモルタルを敷いて高さと水平を出し、モルタルで受けながら据え付けて、合わせ面には石材用ボンドを入れました。

底のそろっていない石を、モルタルで受けて

先祖の石塔のできあがり
次のお参りまで、安心して
二基とも、石と石の間にしっかり中身が入り、合わせ目もコーキングと目地で閉じました。ぐらつきの原因だった「ただ置いてあるだけ」の状態は、もうありません。
近藤石材店は『お墓リフォームの専門家』です。使える石は、使う。今回も新しい石に替えることはせず、ご先祖の石をそのまま活かして据え直しました。
S・M様からは、メールやお電話でのやり取りで不安なくお願いできた、と仰っていただきました。思っていたより土台から丁寧に仕上がった、と喜んでいただけたのが、本当に嬉しいです。
遠くにお住まいでも、次にお参りに来られたとき、同じ姿で待っているお墓であってほしい。そう思って、台座の水平から取り直し、石と石をしっかり結んでいます。
🔨 5代目のひとこと
私も地元ですが、初めて行く場所でした。案内されて、どんどん山の中に入っていくので、びっくりしました。石塔は、きれいに残っていました。ただ、これも石と石の間に何も入っていない、昔のやり方です。当時はそれが当たり前だったので、しょうがないんですよね。ボンドを使うようになったのは、地震があってから。東日本大震災のあとから、というところが結構あります。今回はしっかり直したので、多少木が当たったくらいでは、倒れることはないと思いますよ。
S・M様にいただいた疑問・ご質問
Q. 遠くに住んでいて工事に立ち会えなくても、お願いできますか。
A. はい、大丈夫です。S・M様とは、メールとお電話でやり取りしながら進めました。工事の様子は、写真付きの工事報告書にまとめてお渡ししています。
Q. 石に穴を開けずに、しっかり固定できますか。
A. 今回はダボを使わず、据え付け面にモルタルと石材用ボンド、合わせ面に石材用ボンド、合わせ目に耐震コーキングを入れて、石と石を結びました。穴を開けたくないというご希望にも、このやり方でお応えしています。
Q. 車が入れない山の中のお墓ですが、直せますか。
A. もちろん直せます。車や機械が入れない場所では、三脚とチェーンブロックを組んで、人の手で石を吊り上げて据え直します。今回も竹林の中のお墓で、このやり方で直しました。
施工前 → 施工後
施工前。上の石が地面に落ちていました
施工後。土台から据え直しました
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執筆:有限会社近藤石材店 5代目 近藤洋(創業1925年・千葉県八千代市佐山1837-1・TEL 047-488-5054)