「何度も書き直した図面」——施主様の思いのこもったオリジナルの墓所を、一から一緒に作りあげた事例|千葉県 I様
千葉県のI様の墓地リフォーム事例です。先祖代々の土地にバラバラと点在していた、大小さまざまな20基の先祖石塔を、左右の通路にきれいに整理しながら並べ直しました。先祖の石塔部分と新しいI家のお墓部分を切り分け、奥には和型と洋型を組み合わせたオリジナルの石塔(黒御影石)を建立。市川霊園にあった親戚の方の土地もこちらへ引き揚げてまとめました。石塔を全部外したときに土葬のご先祖様を掘りおこし、ゆるんだ地盤を19本のコンクリート杭で締め直してから基礎をつくっています。
「この石塔、いったいどうすればいいんだろう。」
先祖代々の土地に、大小さまざまな石塔がバラバラと並んでいる。数えてみたら20基。ひとつひとつがご先祖様で、粗末にはできない。でも、このまま置いておいてもお参りしづらいし、草も生える。まとめたほうがいいのは分かっていても、どこから手をつけたらいいのか分からない——I様も、最初はそんなお気持ちだったと思います。
こういう「古い石塔がたくさん残っている土地」のご相談は、実はけっこう多いんです。昔は一人ずつ、あるいは一区切りごとに石塔を建てていたので、代を重ねるうちに石が増えていく。気づいたら敷地いっぱいに大小の石が点在している、というお墓は八千代市や船橋市、千葉県のあちこちにあります。
I様が実家のお墓の大改修を決められたのは、お父様を亡くされたことがきっかけでした。ご自身のお父様を送られて、あらためて先祖代々のお墓と向き合われたのだと思います。どうせきちんとやるなら、と腹を決めて、点在していた石塔を全部整理することになりました。
まず考えたのは、先祖代々の石塔の部分と、これからのI家のお墓の部分を、はっきり切り分けることでした。20基すべてを一度外して、左右の通路に沿って整理しながら並べ直します。大きさも形もバラバラなので、どの石をどこに置くと収まりよく、お参りもしやすいか、一基ずつ位置を考えながら並べていきました。そのうえで奥に、新しくI家のお墓を構える場所をつくっています。

何度も書き直した図面。左右の通路に先祖の石塔を並べ、中央の木は残し、奥に新しいI家のお墓を配置しました。
並べる順番には、I様のこだわりがありました。ふつう、こういう並べ替えは見た目のバランスを見て、背の高い順に並べることが多いんです。でもI様は、古い年号順に並べたい、と。ご先祖様が刻まれた年代の順に、一基ずつ。手間はかかりますが、そのくらい徹底してご先祖様を敬うお気持ちが伝わってきて、私たちも嬉しかったです。
このとき、市川霊園にあった親戚の方の土地も引き揚げて、こちらのお墓に一緒に作り直しました。離れた霊園にあったお墓を、ご実家のこの場所にまとめられたことになります。あちこちに分かれていたものが、一か所でお参りできるようになりました。
新しい石塔は、実は少し変わった形をしています。I様は洋型のお墓をご希望でしたが、まわりに先祖代々の和型の石塔がたくさん並ぶので、洋型だけだと少し浮いてしまう。そこで、和型と洋型を組み合わせた、うちだけのオリジナルの石塔をつくりました。洋型のように横広で、でも背は洋型より少し高い。先祖の石塔ともなじみながら、これからのI家の発展を願う——その両方を込めた形です。この形にたどり着くまで、図面は何度も書き直しました。I様とご相談しては直し、また直し。「一緒に作り上げた」という言葉が、いちばんしっくりくるお墓です。石は黒御影石(石塔インド黒)、外柵と墓所の囲い石には湖南688という白御影石を使いました。黒と白のコントラストで、ぐっと引き締まったお墓になりました。
この墓所には、カロート(納骨堂)を3つ用意しました。中央は本家、左側は掘りおこしたご先祖様のため、右側は市川霊園から引っ越してこられた分家のため。ひとつにまとめてしまわず、それぞれにしっかりとしたカロートを設けることで、どのご先祖様も、これからのご家族も、きちんとお納めしていけるようにしています。それから、墓所の中央にあった木は、切らずにそのまま活かして設計しました。長くその場所にあった木ですから、残せるものは残す。そのほうが、このお墓らしいと思ったんです。ご先祖様への敬いも、これからのご家族のことも、どちらも大事にした——I様の思いがしっかりこもったお墓に仕上がりました。
この工事でいちばん気をつかったのは、実は目に見えない足元の部分でした。石塔を全部外したとき、土葬で埋まっていたご先祖様を掘りおこしもさせていただいたのですが、土をいったん動かすと、その分だけ地盤がゆるみます。ゆるんだ土の上にそのまま石を戻すと、何年か経つうちに傾いたり、沈んだりしてしまう。せっかくきれいに整えても、それでは長くもちません。
なので、土地全体に19本ものコンクリート杭を打ち込んで、地盤そのものを締め直してから基礎工事に入りました。ここは自社で工事まで手がける近藤石材店だからこそ、手間を惜しまずやれるところです。表からは見えませんが、この一手間があるかないかで、お墓が10年後20年後も真っすぐ立っていられるかどうかが変わってきます。
施工前

施工前。大小さまざまな石塔が敷地に点在していました。

施工前の先祖石塔。長い年月で、あちこちに並んでいました。

施工前の先祖石塔。大小さまざまな形が、そのまま残っていました。

市川霊園にあった親戚の方のお墓。こちらへ引き揚げて、一緒に作り直しました。
先祖の掘りおこしと地盤づくり

土葬で埋まっていたご先祖様のお骨を、ひとつずつ探して掘りおこしていきます。

くい打ちの様子。ゆるんだ地盤を締め直すため、杭を一本ずつ打ち込んでいきます。

コンクリート杭打ちの様子。19本の杭で地盤を締め直しました。

地盤づくり。いつもはランマーだけのところ、今回はローラーも使ってしっかり固めました。
新しいお墓(墓所)をつくる

墓所部分のコンクリート、準備が完了したところ。

コンクリートの打設が完了しました。

墓所部分の外柵の状況。中央に本家、左に掘りおこしたご先祖様、右に市川霊園から引っ越しの分家と、3つのカロートを用意しました。

墓所部分の外柵の据え付けが完了しました。
先祖コーナーをつくる

先祖石塔の右側。小さな石碑が多いので、台石をコンクリートに埋め込み、間隔をとりながら先に取り付けていきます。

先祖コーナーのコンクリート打ち。

先祖石塔の取り付け。不安定なものはダボを差して、基礎からしっかり固定しています。

先祖コーナーの取り付け状況。
完成

完成した墓所の全体。バラバラだった石塔と新しいお墓が、ひとつにまとまりました。

墓地の仕上がり。奥に黒御影石の新しいお墓が建ちました。

先祖コーナーの左側。整理して並べ直した、先祖代々の石塔です。

先祖コーナーの右側。小さな石碑も台石を埋め込み、しっかり固定して並べました。
仕上がりをご覧になったI様には、大変すばらしいお墓ができた、と喜んでいただけました。バラバラだった石塔がひとつにまとまって、ご先祖様みんなが同じ場所で眠れるようになった。そのことに、私たちもほっとしています。
古い石塔がたくさん残っていて、どうしたらいいか分からない。そんなときは、一度見に行かせてください。石を大切にしながら、いちばん収まりのいい形を一緒に考えます。
🔨 5代目のひとこと
今回のお墓は、I様がお父様を亡くされたのをきっかけに、実家の墓地を大きく直すことになったお仕事でした。先祖代々の石塔があちこちに点在していたので、どうせやるなら、と全部取り外して整理して、埋まっていたご先祖様も掘り起こさせてもらいました。掘り起こすと土がゆるむから、杭をしっかり打って地盤を固めてから基礎をつくっています。新しい石塔は、I様は洋型がご希望だったけど、まわりに先祖の和型が多いから、和型と洋型を混ぜたうちだけの形にしました。横広で、背も洋型より少し高くしてね。これからI家がずっと発展していくように、っていう願いを込めたお墓です。
よくあるご質問
Q. 古い先祖の石塔がたくさんあります。全部まとめてしまってもいいのでしょうか?
一基ずつがご先祖様ですので、無理にひとつにしなければいけないわけではありません。ただ、お参りのしやすさやお手入れのことを考えて、通路に沿って整理し直したり、一部をまとめたりする方は多いです。I様の場合は20基を左右に並べ直しました。石を粗末にしない形で、ご家族のお気持ちに合わせてご提案します。
Q. 土葬のご先祖様が埋まっているようです。掘りおこしてもらえますか?
はい、石塔を外した際に掘りおこしもさせていただきます。今回のI様のお墓でも行いました。ご先祖様に失礼のないよう、丁寧に進めますのでご安心ください。
Q. 石塔を動かすと、お墓が傾いたりしませんか?
石を外すと土が動き、地盤がゆるむことがあります。そのまま戻すと年月とともに傾くおそれがあるので、I様のお墓では19本のコンクリート杭で地盤を締め直してから基礎をつくりました。この足元の一手間が、長くもつお墓につながります。
執筆:有限会社近藤石材店 5代目 近藤洋(創業1925年・千葉県八千代市)