ずれてきた大谷石の塀を、埋めずに金物でつなぎとめた事例|船橋市
この工事のポイント
施工前。上の段の壁石がずれてきていました
補修中。手押しポンプで目地の奥からモルタルを
船橋市のご自宅。お住まいを建てたときに据えられた、40年以上前の大谷石(おおやいし)の塀の壁石がずれてきて危ない、というご相談でした。以前にモルタルで隙間を埋めただけの補修跡があり、それを落としたうえで水の抜け道をつくり、金物で石と石をつなぎとめています。

① 埋めるだけをやめて、金物で石と石をつなぐ
以前のモルタルを落とし、下の段に鎹(かすがい)を2本、上の3段に平バーを3本取り付けました。金物はケミカルアンカーで留め、石材用ボンドも併用しています。

② 塀の裏にたまる水に、抜け道をつくる
塀の裏は土で、雨水がたまりやすい造りでした。石と石の間に管を通して、水抜きの穴を1か所設けています。


③ 車が当たって外れた手すりも、据え直す
階段の手すりが根元から外れていました。垂直を出してから型枠を組み、モルタルを充填して根元を固め直しています。
| 場所 | 千葉県船橋市のご自宅 |
|---|---|
| 工期 | 2026年8月5日(1日) |
| ご相談 | 40年以上前の大谷石の塀の壁石がずれてきて危ない |
| 主な工事 | 以前のモルタルの撤去/水抜きの穴(1か所)/鎹2本・平バー3本の取り付け(ケミカルアンカー+石材用ボンド)/目地のモルタルの詰め直し(手押しポンプで奥から)/手すりの据え直し(型枠+モルタル)/前面道路までの清掃 |
| こんな方に | 大谷石の塀やブロック塀の石がずれてきた方/前に直したのに、また隙間が開いてきた方/道路に面した塀で、崩れないか心配な方 |
「うちの塀も同じかもしれない」と思ったら、スマホで今の塀の写真を撮って、LINEで送ってください。写真を見て、どこに原因がありそうかをお伝えします。
お電話は 047-488-5054(24時間受付・AI対応)
ここから先は、工事の中身を順番にお見せします。少し長くなりますが、完成したら見えなくなるところこそ、近藤石材店がいちばん力を入れているところです。
「壁石が、ずれてきていて」
ご相談はLINEでいただきました。ご自宅の大谷石の塀が古くなって、崩れそうで心配だ、というお話です。
5月に打ち合わせに伺いました。お住まいを建てたときに一緒に据えられた、40年以上前の大谷石の塀です。このあたりでは、当時こうして大谷石で塀を組むことがよくありました。
道路に面した塀です。石が落ちたら、通る人にも車にも危ない。毎日前を通るたびに、気になっていたと思います。

ご相談をいただいた塀の角。上の段の壁石がずれていました
一度、直された跡がありました
上の段の壁石がずれて、下の石との境目に段差が出ていました。以前に詰められたモルタルも、石の動きに追いつかずに割れています。

石がずれて段差ができ、以前のモルタルも割れていました
目地(石と石のつなぎ目のことです)は開き、前の補修跡もはがれてきていました。ここから水が入ると、さらに石を傷めてしまいます。

目地が開き、前の補修跡もはがれかけていました
開いている幅と段差は、スケールを当てて確かめます。目分量ではなく、数字で確かめる。これが近藤石材店のやり方です。

スケールを当てて、開きと段差を確かめます
埋めるだけでは、止まらない
以前の補修は、モルタルで隙間を埋めるだけのものでした。石の動きを止める手は、入っていませんでした。
埋めるだけでは、石が動くたびに隙間はかえって広がってしまいます。見た目はいったんきれいになっても、また同じところが開いてくる。今回のずれも、そうして進んできたものだと思います。
だから今回は、そのモルタルを落とすところからやり直しました。
大谷石はやわらかい石です。機械で一気に削れば、石のほうが傷んでしまいます。タガネ(石を割ったり削ったりするノミのような道具です)を使って、手作業で少しずつ取り除きました。

以前のモルタルを、タガネで少しずつ落とします
落としたあとは、ブロワーで目地の中のくずまで吹き飛ばします。中にごみが残っていると、あとから詰めるモルタルが効かないからです。足元は養生シートで汚さないようにしています。

目地の中のくずまで、ブロワーで吹き飛ばします
塀の裏の水に、抜け道を
この塀の裏側は土になっていて、雨水が抜けずにたまりやすい造りでした。水がたまれば、その重さと湿気が石を押し、傷めていきます。
そこで、水の抜け道をつくるための管を用意しました。

水の抜け道にする管を用意します
石と石の間に管を通して、水抜きの穴を1か所設けました。

石と石の間に管を通し、水抜きの穴にしました
正直に言うと、1か所だけで水がすべて抜けるわけではありません。本当はもっと数を入れたいところです。ただ、今の塀の造りで入れられる場所は限られていました。少しでも水が抜けるように、入れられるところに入れています。
石と石を、金物でつなぐ
今回の工事の中心は、ここです。ずれてきた石どうしを、金物でつなぎとめました。
まず、金物を留めるための下穴を開けます。大谷石はやわらかいので、位置と深さを見ながら慎重に開けていきます。

位置と深さを見ながら、下穴を開けます
下穴には、ケミカルアンカー(接着剤で固めるタイプのアンカーです)を入れました。効きがとても強く、あわせて石材用ボンドも使っています。やわらかい大谷石を力まかせに締め付けずに、しっかり効かせることができます。

下穴にケミカルアンカーを入れ、石材用ボンドも併用
下の段の壁石には、コの字の形をした鎹(かすがい=石と石をつなぎとめる金物)を2本入れました。ここは手が入りづらく平バーが納まらないため、鎹で石どうしをつないでいます。

手の入りづらい下の段は、鎹を2本
上の3段には、すべての段に平バーを取り付けました。合わせて3本です。
表から見える場所なので、薄い平バーを選んでいます。硬い材だと石の面に沿って曲げられないため、曲げの効くやわらかい材を使いました。取り付けたあとは水平器を当てて、通りと水平を確かめています。

上の3段すべてに、平バーを取り付けました
目地は、奥から詰める
石と石の目地には、手押しのポンプでモルタルを送り込んでいきます。表からコテで塗るだけでは、奥まで届きません。奥から順に詰めていきます。

手押しポンプで、目地の奥からモルタルを送り込みます
送り込んだモルタルは、コテで押し込みながら仕上げます。目地から水が入り込まないように詰めることが、石を長持ちさせることにつながります。

コテで押し込みながら仕上げます
車が当たった手すりも
階段の手すりが、根元から外れていました。お聞きしたところ、車が当たってしまったとのことでした。

施工前。手すりが根元から外れていました
まずは木のくさびで根元の位置を押さえて垂直を出し、まわりに型枠を組んでいきます。

くさびで垂直を出し、型枠を組みます
組んだ型枠にモルタルを流し込み、根元を固めました。垂直を確かめながら、動かないように押さえたまま入れていきます。

型枠にモルタルを流し込み、根元を固めます
ご近所の道まで、きれいにして
工事が終わったあとは、前の道路まで水で洗い流し、掃き清めてお引き渡ししました。資材を置かせていただいた場所も、きれいにしてお返ししています。ご近所にご迷惑をおかけしないことも、私たちの大切な仕事です。

前の道路まで洗い流して、お引き渡し
ずれてきていた壁石は、ケミカルアンカーと石材用ボンド、そして鎹と平バーでつなぎとめました。
石そのものが古く、すでに割れも入っているので、まったく動かないとは言いません。ただ、平バーが切れることはまずありませんので、石が離れてしまうことはないと考えています。塀の裏にたまっていた水も、抜けるようになりました。
近藤石材店はお墓リフォームの専門家ですが、こうしたご自宅の石塀や庭まわりの石の工事もしています。石と石をどうつなげば長く持つか。考えることは、お墓もご自宅の塀も同じです。
🔨 5代目のひとこと
お住まいを建てたときに据えた、40年以上前の大谷石の塀です。前にもどこかで一度直した跡がありましたが、モルタルで隙間を埋めただけで、石の動きを止める手は入っていませんでした。埋めるだけだと、動くたびに隙間はかえって広がっていくんです。だから今回は、水の抜け道と金物という、完成すると見えなくなるところにこそ手を入れました。正直、この先いっさい動かないとは約束できません。石そのものも傷んできていますし、手を入れたいところはまだ残っています。そのうえで、いまできること、とりわけ危ないところだけは直させてもらいました。
お客様にいただいた疑問・ご質問
Q. 大谷石の塀の隙間が開いてきました。モルタルで埋めれば直りますか?
A. 埋めるだけでは、石の動きは止まりません。石が動くたびに、隙間はかえって広がってしまいます。船橋市のこの塀でも、以前にモルタルで埋めた跡が割れて、ずれが進んでいました。今回は古いモルタルを落としたうえで、水抜きの穴を設け、鎹と平バーで石と石をつなぎとめてから、目地を奥から詰め直しています。
Q. 補修したら、もう動かなくなりますか?
A. 40年以上経った大谷石は、石そのものも傷んでいて、割れが入っていることもあります。なので、まったく動かないとはお約束できません。ただ、金物で石どうしをつないでおけば、石が離れて落ちてしまうことはまずないと考えています。どこまで直せるかは、現地で石の状態を見てから正直にお伝えします。
Q. 塀と一緒に、車が当たって外れた手すりも直せますか?
A. 直せます。今回も、階段の手すりが根元から外れていました。くさびで垂直を出してから型枠を組み、モルタルを充填して根元を固め直しています。塀の補修と同じ日に、まとめて直しました。
施工前 → 施工後
施工前。上の段の壁石がずれていました
施工後。金物で石と石をつなぎとめました
大谷石の塀は、直し方がひとつではありません。すでに崩れてしまった塀は、今回のようにつなぎとめるのではなく、積み直して直すこともあります。車がぶつかって崩れた塀を積み直した事例も、あわせてご覧ください。
塀の石のずれや隙間が気になったら、まずは写真だけでも大丈夫です。今の塀を見て、10年後も安心して前を通れる直し方を一緒に考えます。
執筆:有限会社近藤石材店 5代目 近藤洋(創業1925年・千葉県八千代市佐山1837-1・TEL 047-488-5054)